化成処理におけるリン酸塩処理とは?種類別に解説

以前の記事で化成処理について説明させていただきました。
化成処理の中でもリン酸塩処理は100年の歴史を持ち、電着塗装とも50年の歴史があります。
現在でも電着塗装の工程のなかで、リン酸塩処理を利用した化成処理は主流となっています。
今回はリン酸塩処理についてご紹介します。

リン酸塩処理とは

リン酸塩処理とは、化成処理の代表的な方法で、リン酸鉄、リン酸亜鉛、リン酸マンガンなどのリン酸塩溶液を使って、素材の表面にリン酸塩皮膜を形成する処理となります。
そして、リン酸塩処理をより理解しやすくするために「結晶性」「非晶性」についてご説明します。
「結晶性」とは分子が規則正しく並ぶ性質です。結晶質の皮膜では耐久性が強いことや、耐薬品性が強いといった特徴が挙げられます。
「非晶質」とは、分子が不規則に並ぶ性質のことです。非晶質の皮膜では塗装の際の密着性が高いことや、透明性が高いこといった特徴が挙げられます。

リン酸塩処理の用途

以前は道具や武器などの金属製品において、錆防止として利用されていました。しかし、近年では自動車部品や機械部品などの工業製品の塗装下地として利用されています。

リン酸塩処理の特徴

・油の吸収性がいいので、素材表面が滑らかになる。
・防錆能力がある。
・アンカー効果によって塗膜やめっきの密着性が上がる。
*アンカー効果・・・リン酸塩皮膜表面の微細な凸凹に塗料やめっき液が入り込むことによって密着力が高まる効果。
・鉄や銅などの幅広い素材に処理が可能

リン酸塩処理の種類

リン酸亜鉛処理

リン酸亜鉛処理は、リン酸塩処理の中でも最も多く利用されています。
主成分はリン酸イオンと亜鉛イオンです。この2つの成分が結晶を形成することで防錆力密着性を大きく向上させます。
鉄鋼・亜鉛製品などの金属の塗装下地に使用されます。

リン酸鉄処理

主成分はリン酸イオンです。ほかのリン酸塩処理と異なり、非晶質の皮膜が形成されます。リン酸亜鉛処理と比べて、防錆力は劣ります。しかし、ほかのリン酸塩処理と比べて、処理のコストが低く処理工程も少ないため塗装下地として好んで選ばれる傾向があります。

リン酸カルシウム処理

主成分はリン酸イオン、亜鉛イオンとカルシウムイオンであり、結晶性の皮膜を形成します。同じ結晶性の皮膜を形成するリン酸亜鉛イオンと比べて、耐熱温度が高く高温で焼き付ける塗装下地に適しています。

リン酸マンガン処理

主成分はリン酸イオンとマンガンイオンであり、結晶性の皮膜が形成されます。リン酸亜鉛処理に比べて皮膜が厚く表面の粒子が粗い特徴があります。耐摩耗性に優れ潤滑作用が大きいことから、ギアやピストン、ベアリングをはじめとする摺動部品に多く採用されます。

まとめ

いかがだったでしょうか。
電着塗装で採用されているリン酸塩処理には素晴らしい特徴があります。自動車のボディの防錆に対する基盤処理とも言われています。
少しでもリン酸塩処理について理解が深まったのであれば幸いです。
タマ化工株式会社では、カチオン電着塗装の表面処理を行っております。リン酸亜鉛処理を行い、塗膜の密着性と防錆能力の向上に努めております。表面処理のお困りごとがございましたら是非ご相談ください。

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