【比較と解説】「電解めっき」と「無電解めっき」の違いや特性について

みなさんは”めっき”という加工技術をご存じでしょうか。 めっきの加工方法は大きく分けて2つあります。また、それら加工方法の中にもいくつか種類があります。 どのようなめっきが必要かによって加工方法も分けていく必要があり、方法によって得られるめっきの性能も異なります。 今回はめっきの加工方法のなかでも代表的な2つである電解めっきと無電解めっきについて説明させていただきます。

電解めっきについて

電解めっきとは溶液で満たされたメッキ槽の中にめっきそのものとなる金属(+極)と、被めっき物(-極)とを同時に中にいれ、直流電源につないで電気をかける方法です。+極側の金属が溶け出して、-極側に金属が析出する現象を利用しためっき方法の一つです。 車のバンパー、ドアノブ、ミラー、エンブレムなどの自動車外装の部品、スマートフォンなどの電子部品などの私たちの身の回りの多くに電解めっきが施されています。

電解めっきのメリット

コストが低い

電解めっきは、化学反応によって金属イオンを水溶液中に溶解させ、金属を被覆する方法です。このめっき方法は他の方法に比べて比較的安価であり大量生産にも適しています。また素材の製造に比べてもコストが低いため、大量生産品には特に適しています。

様々な金属にめっきできる

電解めっきは、銅、ニッケル、クロム、金、銀、亜鉛など、様々な金属に適用できます。また非導電性の材料でも導電性材料で被覆することでめっきできます。このため多種多様な部品や製品に使用されます。

金属感があり鏡面仕上げができる

電解めっきは金属感があり、鏡面仕上げができます。このため高級感のある製品に使用されることが多く、美容・健康製品や高級車の装飾品、家具などに使用されます。

耐熱性、耐摩耗性、耐汚染性がある

電解めっきは被覆された金属が密着し、耐熱性、耐摩耗性、耐汚染性に優れています。高温環境下で使用される部品や外部環境に影響を受ける部品に使用されます。また汚れや酸化にも強く、美観を保つことができます。

電解めっきのデメリット

均一にめっきすることが難しい

電解めっきは金属イオンを水溶液中に溶かし、電気的に還元して被覆する方法です。しかしめっきする部品の形状や素材によっては均一にめっきすることが難しくなります。例えば太い部分や細い部分がある場合には、めっきされる量が異なってしまい均一な被覆が難しくなります。

長時間かかる場合がある

電解めっきは、水溶液中に金属イオンを溶かして電気的にめっきを行うため、めっきする部品の大きさや素材によってはめっきに時間がかかる場合があります。特に大型の製品や硬質な素材の場合、めっきを行うためには時間が必要になります。

ピンホールが生じやすい

電解めっきにおいては、めっきの際に気泡が発生することがあります。この気泡がめっき膜中に残ることでピンホールと呼ばれる小さな穴が生じることがあります。このピンホールがあると腐食や変色などの被覆の劣化が進むことがあります。

無電解めっきについて

無電解めっきとは、電気を使用せずに被めっき物をめっき液の中に浸漬することで化学反応が起こり、被めっき物の種類、形状関係なく均一性のあるめっき皮膜が得られます。そのため電気を通さない素材のものにもめっきが可能です。私たちの身近なもので言うと電子部品や機械製品などの基板に無電解めっきが施されています。

無電解めっきのメリット

金属素材の種類、被塗物の形状に関係なく均一性のあるめっき皮膜ができる

無電解めっきは、電気を使用しないめっき技術であり、溶液中にイオン化した金属を含んだプレートを使用します。金属素材の種類や被塗物の形状に影響されず、均一なめっき皮膜が得られます。

プラスチックなどの不導体にもめっきが可能。

無電解めっきは電気を使用しないため、導体だけでなく不導体の部品にもめっきが可能です。プラスチックなどの素材にもめっきを行うことができます。

耐薬品性が強い

無電解めっきには特殊なめっき液が使用され、このめっき皮膜は耐薬品性が強く、耐久性に優れています。

無電解めっきのデメリット

材料費が高く、析出速度も遅いためコストが高くなる傾向にある

無電解めっきには特殊なめっき液やプレートなどが必要です。また、析出速度が遅いためめっき時間が長くかかることがあります。これらの理由からコストが高くなる傾向があります。

液中の温度を高くする必要があるため、熱の影響を受ける素材はめっきできない

無電解めっきには溶液中の温度を高くする必要があります。この影響で熱に弱い素材にはめっきができないことがあります。また溶液中の温度が高くなることで、めっき皮膜の品質にも影響を与えることがあります。

電解めっきと無電解めっきの違いについて

電解めっきは電気を流した時に電気分解が起こり、化学反応によってめっき皮膜を析出する方法です。 一方、無電解めっきは、電気は使用せずに薬品によって化学変化を起こさせめっき皮膜を作るという方法です。

電解めっきはめっき治具による被めっき物の配置、めっき皮膜が厚いこと、薄くなる部分への補助極の配置などで、多くの工夫や技術が必要になります。 無電解めっきは、析出させたいめっきを物質に含ませた水溶液に、被めっき物を浸し、表面で還元反応を起こさせて、めっき皮膜を成長させます。 無電解めっきは電気を使わないため、電気の流れに左右されず、表面に均一にめっきすることが可能です。そのため無電解めっきは複雑な形状のものへのめっきに適しています。

ただし無電解めっきは、PH調整剤や添加剤などめっき槽へ投入する薬品とめっき槽の温度調整だけでめっきしたい物質と被めっき物が化学反応する必要があります。 したがって、電解めっきと比べると、無電解めっきの加工方法の種類は少ないのが特徴です。

まとめ

いかがだったでしょうか。
電解めっきと無電解めっきについて説明させていただきました。この2つには異なるメリットも持っていて、大きな違いもあることが分かったと思います。
電解メッキは、無電解メッキと比較して、低コストで様々な金属にメッキできるため、最も広範に用いられているメッキ法です。電解メッキの種類も様々ですが、品質やコストを勘案すると、無電解メッキが適切な場合もあります。ぜひ参考にしていただければ幸いです。何かございましたら、東栄コーティング株式会社までお問い合わせください。

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