射出成形で起こってしまう不良とは?その種類と原因、改善策まで詳しく解説!

この記事では、射出成形で起こる代表的な不良を4種類ご紹介します。

 

①ヒケ

ヒケとは、製品の表面がへこんでしまう現象を指します。 ヒケの原因は、プラスチック樹脂の収縮差です。 プラスチックは、熱を加えると膨張し、固まると収縮する、という性質を持っています。 その際に、温度や厚みが違う部位があると、収縮に差が出てしまい、その結果へこみになって出現してしまいます。 例えば、製品を補強するリブやネジ受け・ネジインサートの役割を果たすボスなどは、肉厚が厚く出てしまう部分です。そのため、ヒケは主にリブやボスなどにできやすい不良として知られています。 また、製品の外側はすでに固まっているのに、内側がまだ固まっていない場合、内側で固まるのにつれて、外側のプラスチックがひっぱられ、ヒケを生じさせることもあります。

 

②ソリ

ソリとは、製品が反ってしまうことです。 ソリの原因も、ヒケと同じく、プラスチック樹脂の収縮率の差によって起こります。 ソリが起こる原因はさらに大きく分けて、成形時の「温度」「圧力」「強化繊維の配列」の3つが挙げられます。

ソリの原因①:温度

温度が原因のソリ不良は、さらに「シリンダー内での滞留時間不足」「金型内の温度不足」「ノズルの温度不足」に分けられます。

①シリンダー内での残留時間不足

シリンダー内での滞留時間が少ないと、十分に加熱できている箇所と十分に加熱できていない箇所が混在します。そのため、冷えて固まる際の収縮に差が出てしまい、ソリを生んでしまいます。

②金型内の温度不足

金型内の温度が不十分なとき、樹脂が保圧前に固まってしまうときがあります。そのため、樹脂が収縮してしまい、ソリを生んでしまいます。また、金型内の温度が不均一な場合でも、同様に収縮度の差を生んでしまい、ソリになってしまいます。

③ノズルの温度不足

ノズルの温度が低すぎる場合、樹脂の移動時間が遅くなり、樹脂が充填される前に固まり始めてしまうので、ソリを生んでしまいます。

ソリの原因②:圧力

射出圧力が不十分なとき、先に樹脂が固まってしまうときがあります。そのため、樹脂が充填される前に、樹脂が収縮して固まってしまい、ソリを生んでしまいます。

ソリの原因③:強化繊維の配列

強化繊維の配列が原因のソリ不良は、ガラス繊維などの強化繊維入りの樹脂(FRP)に起こります。これらは、樹脂の流れ方でその強化繊維の向きが定まります。 通常、樹脂が流れる方向に繊維が向くことが多く、強化繊維の配合と垂直な方向では、収縮は大きくなる一方で、直にならない方向では収縮が小さくなり、この差がソリを生んでしまいます。

③ボイド(気泡)

ボイド(気泡)とは、製品の内部に生じる空洞のことを指します。表面が陥没してしまうヒケと似ていますが、ボイドは製品の内部にできる、という点でヒケとは区別されています。 ボイドは、特に透明なプラスチックでは外観不良に繋がります。さらに、強度の低下や破壊の原因を招きます。 ボイドの原因はヒケと似ており、プラスチック樹脂の収縮差です。 成形品の外側から固まり、内部や肉厚部の中心は、成形品の表面に比べて固まるのが遅く、早く冷えることで収縮の発生も早い表面の方向に樹脂が突っ張ります。 遅れて、内部が固まる中で、プラスチックの収縮が中心部に集中した結果、中心部に空洞が生じることで、ボイドが発生します。

④ヤケ

ヤケとは、プラスチックが黒色や茶色に焼けてしまうことを言います。特に透明プラスチックだと、黄色く変色しているところもあります。 ヤケの原因は3点あります。

①空気の影響(ガス焼け)

射出成形機のホッパーからシリンダーにかけて、空気が入ったり、射出成形時に金型内の空気が抜けていない場合、そこから高温になり、樹脂が焼けることがあります。特に樹脂の流れが悪く、空気が滞留し、圧縮されて高温になることもあります。

②器具の温度が熱すぎる

ノズルやシリンダーの温度が高すぎる場合、樹脂の温度が上がりヤケになることがあります。また、金型内の温度が高すぎる場合も同様にヤケの原因になります。

③滞留時間が長い

樹脂がシリンダー内で滞留する時間が長いと、樹脂の温度が上がりヤケになることがあります。樹脂の滞留時間を適切にする必要があります。

 

不良を起こさないための対策とは

不良品を起こさない対策は、大きく分けて5つあります。

①設計の見直し

不良は、金型などの設計の確認をすることによって改善する場合があります。 特にリブやボスなど、肉厚が厚く出てしまう部分に関しては、より全体の厚みを均一にできるように調整したり、リブ・ボス部分を薄く設計できないか見直すことも重要です。

②シリンダー・ノズル・金型の温度の確認

樹脂がしっかりと溶けるためのシリンダーの温度は十分でしょうか。また、樹脂が滞留する時間は適切でしょうか。ノズルや金型の温度は均一で、十分な温度かを確かめましょう。これらを確認し、10度温度を変化させるごとに10サンプル程度を作成し、サンプルに不良が出ていないかを確認する必要があります。

③射出圧力・および保圧が十分であるかの確認

樹脂が射出されるスピードは十分でしょうか。射出圧力や保圧を少しずつ上げて、サンプルに不良が出ていないかを確認しましょう。

④射出スピードの確認

樹脂が射出されるスピードは速すぎませんか?早すぎるとヤケの原因にもなります。射出スピードを見極め、不良が出ていないかを確認しましょう。

⑤ガスインジェクションなどの補助装置の検討

射出成形機自体の保圧ではなく、製品内部にガスを注入し、内側から圧力をかけるガスインジェクション装置などは、ヒケを改善できる可能性があります。 冷却された窒素ガスが内部に注入されることによって、より肉厚な部位に窒素ガスが入り、製品のヒケを抑えます。 また、+αの効果として、製品の肉薄化や軽量化も期待できます。

最後に

射出成形における不良4種類について、ご理解いただけましたでしょうか? 不良品を減らすことで、生産サイクルの向上や、樹脂の削減に繋がります。 この記事が、生産工程についての見直しや、不良品を削減できないかを検討するきっかけになれば幸いです。

株式会社カケンジェネックスでは、射出成形機でプラスチック成形を行っている会社様に対して、樹脂の少量化・成形サイクルの向上をご提案できるガスインジェクション装置を製造・販売しております。高圧ガス取扱いの資格者・メンテナンスの知識も豊富ですので、ご検討の際はぜひ一度ご連絡ください。

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