【溶剤、静電、焼付、粉体】さまざまな塗装の種類とメリットデメリットを解説

皆さんは塗装という言葉をどのように捉えていますか?
多くの場合、ざっくりと「モノに塗料を塗って色を付けたりすること」をイメージするのではないでしょうか。
しかし、実は塗装の中でも塗装対象によって塗料の種類が違ったりそもそも塗装のやり方が違います。例えば建築物など外壁を対象とする塗装と自動車部品など金属を対象とする塗装はやり方も違います。そしてそれらの中にもまた塗装の種類があります。そのなかで今回は金属に対する塗装の種類をご紹介します。

塗装とは

塗装とは、塗布や吹き付けによって、製品表面に塗膜を形成させる表面処理のことをいいます。(材料となる塗料に樹脂が含まれているので、塗膜にも樹脂が含まれます)

塗装の目的は製品に美観を与え、保護することが目的です。

塗装方法の種類

溶剤塗装

溶剤塗装とは、シンナーなどの有機溶剤を混ぜた塗料を使用する塗装です。塗装後、自然乾燥また焼き付け乾燥を行って塗膜を形成します。塗装方法の中で汎用性が高いことから最も一般的です。塗装工法は主に吹き付けによる塗装ですが、大型な被塗物にはレシプロケーターなどの塗装ロボットを使用します。

溶剤塗装のメリット

塗料が低コストであり塗料の選択肢が多いです。また、色の種類も多く色の指定があっても納期が早い傾向にあります。塗料の種類や塗装工程が少ないことから、様々な要望があったとしても柔軟に対応できる塗装です。

例えば、下地から上塗りの塗り重ねの時間を短縮したい場合、低温で焼き付けたいけど強い塗膜を形成したい場合、などがあります。

溶剤塗装のデメリット

塗料に中毒性や大気汚染の可能性がある成分が含まれていることです。トルエンやキレシンなどの揮発性有機化合物(VOC)は身体に一定以上吸入されるとがん、肝臓う腎臓の損傷、神経系障害などを引き起こす恐れがあります。
また塗装技術によって仕上がりが変わりやすいです。さらに比較的塗着効率が悪い分類となり、技術習得が前提として必要な塗装になります。

焼付塗装

焼付塗装とは塗料を揮発させて材料に吹き付けた後に加熱して乾燥を早めることで塗料を硬化させる塗装です。加熱すれば焼付塗装になるというわけではなく、加熱をして硬化する専用の塗料で行います。自動車のボディの下塗りや調理器具などの耐熱性が必要な場合に活用されます。

焼付塗装のメリット

塗料を焼き付け、硬化させることで強度の高い塗膜を形成することができます。また防錆能力・耐候性も向上させることができます。

焼付塗装のデメリット

高温で塗料を焼き付けるので、熱硬化性樹脂を含有する塗料で塗装を行う必要があります。塗装する素材も熱を加えられない素材には塗装することはできません。
加えて重ね塗りができないことや、膜厚が付きづらい塗装方法になります。

粉体塗装

粉体塗装とは、粉末状の塗料を用いて塗装し、その後焼き付け乾燥を行い塗膜を形成する塗装です。水道資材自動車部品建築部品工業設備など幅広く扱われます。

粉体塗装のメリット

30μm以上の膜厚であるので素地の腐食が進行を防止でき、錆びも発生しづらいです。塗膜の強度も高く、耐久性が優れています。

耐用年数が15年~20年と非常に長いことも特徴です。塗料に揮発性有機化合物を含有しておらず環境にも優しい塗装方法です。

粉体塗装のデメリット

塗膜表面に小さな凸凹ができやすく、外観が悪いことが挙げられます。専用塗装設備も必要であり初期コストが高くなります。
薄い塗膜の形成が困難であり塗膜の膜厚調整が難しいです。塗り替えも困難であり要望に柔軟に対応することが難しい塗装方法です。

静電塗装

静電塗装とは、塗料の粒子と被塗物にそれぞれ異なる極の静電気を付与させ、高電圧をかけることで塗料の粒子を被塗物に付着させ塗膜を形成する塗装です。

静電塗装のメリット

静電気同士の力で塗膜が形成されるので、塗膜が均一になりやすい気泡がなく外観性に優れている塗装方法です。また、静電気同士が引き付けあうことでことで塗料の無駄な飛散が起こりにくく。塗料のロスが減らすことが可能です。

静電塗装のデメリット

塗装可能な素材が金属と限られ、また袋構造の中に塗装することができません。そして、一度塗膜を形成させると再塗装ができません。
また電着塗装と比べると非常に高い電圧を流すので火災には十分な対策が必要となります。

電着塗装

電着塗装とは、樹脂などの塗料が入った水の中に被塗物を入れて電気を流して塗装を行う方法です。被塗物とは別の場所に電極を付けてそれぞれにプラスとマイナスの電気を流すことで塗料を付着させて塗装を行います。

電着塗装のメリット

塗料のプールの中で電流を流すため複雑な形状な被塗物でも均一な塗膜を形成することができます。機械で膜厚管理ができるので、職人の技術に左右されません。また、優れた防錆能力を付与するできます。塗料は水性塗料で揮発性有機化合物を含まず、環境への影響が少ない塗装方法です。

電着塗装のデメリット

色を変更する場合、プールの中の塗料を全て変える必要があるので作業に時間がかかります。設備が大型になりやすく初期コストも高めになります。
一度塗膜を形成すると、絶縁性を持つため、再び電着塗装を行うことができません。

まとめ

塗装の方法が違ったり、それぞれにメリットやデメリットがあります。被塗物の性質で、あるいはどのような機能を付与したいかでも塗装方法も決まります。
また1つの被塗物に対して2つの塗装を組み合わせることあります。例えば初めに電着塗装を行い、その後粉体塗装を行うことがあります。これにより高い防錆能力に加えて色を付与することができます。
タマ化工株式会社では、カチオン電着塗装の表面処理を行っています。受け入れから出荷までの一括管理で迅速な納品が可能となっております。また、小物から大型部品まで対応可能なフレキシブルな塗装ラインを有しており、低コストでの加工が可能なので、表面処理のお困りごとがございましたら一度お問合せしてみてはいかがでしょうか。

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