結晶性樹脂と非晶性樹脂の違いを解説

結晶性樹脂とは

射出成形で使われるプラスチックの種類について、別記事でもご説明していましたが、今回はその中でも「結晶性樹脂」「非晶性樹脂」について詳しくご説明します。

結晶性樹脂とは、樹脂の温度が低下するごとに分子運動がゆっくりと収まり、樹脂の温度が結晶化温度(Tc)まで低下し固化したときに、分子が規則的に並んだ結晶部分を持つものです。
図で表すと、このようになります。

非晶性樹脂とは

非晶性樹脂とは、樹脂の温度が結晶化温度まで下がったとき、分子が結晶部分を持たず、不規則に絡み合ったまま固化する樹脂のことを指します。図で表すと、このようになります。

結晶性樹脂と非晶性樹脂の違いとは

ここまで、結晶性樹脂と非晶性樹脂とは何かについてご説明しました。
では、性能の観点で2つの樹脂にはどのような違いがあるのでしょうか?
ここでは、5点ご紹介します。

①透明性

非晶性樹脂の多くは、透明性・透過性がありますが、一方で結晶性樹脂は透明性が低下します。その理由は、結晶部分と非晶部分で、それぞれ屈折率が異なり、光が内部で乱反射してしまうためです。
例外として、結晶性樹脂であるPETを用いているペットボトルは、結晶性樹脂が結晶化し始める温度付近で急速冷却すると、結晶化する時間が不足し結晶化度が低下します。結晶部分を減らすことで、結晶性樹脂であっても、透明性を担保することができます。

②耐薬品性

結晶部分には薬品が入り込みにくいため、結晶性樹脂の多くは非晶性樹脂に比べ耐薬品性が強い傾向にあります。

③塗装・接着性

結晶性樹脂の多くは、結晶部分に薬品が入り込みにくい一方で、塗装性・接着性が低下します。結晶性樹脂は、接着性の低さを生かして、接着剤の容器や剥離フィルムなどに用いられます。

④温度特性

樹脂は高温になると、分子運動しやすくなり、軟質(ゴム状態)になります。一方で、温度が低下すると硬質(ガラス状態)になります。この2つの状態の境目の温度を「ガラス展移転(Tg)」といいます。ゴム状態からさらに高温になると、結晶性樹脂の結晶部分が流動しはじめ液状になる温度を「融点(Tm)」といいます。
非晶性樹脂は結晶部分を持たないので、融点はなく、ガラス転移点のみを持ちます。

⑤寸法精度

結晶性樹脂の結晶部分は、液状では体積が増え、固化すると収縮して体積が減少します。そのため、樹脂の収縮率が大きいほど、寸法精度が低くなります。そのため、ヒケ、ソリなどの不良品が発生するため、金型の設計には配慮が必要となります。

まとめ

結晶性樹脂と非晶性樹脂の違いを表にまとめると、下の図のようになります。

最後に

結晶性樹脂と非晶性樹脂の違いについて、ご理解いただけましたでしょうか?
射出成形を行う際、プラスチックがどのような性質を持っているか、確認をしながら成形を行うことが重要です。この記事をもとに、性質を理解するきっかけになれば幸いです。

株式会社カケンジェネックスでは、射出成形機でプラスチック成形を行っている会社様に対して、樹脂の少量化・成形サイクルの向上をご提案できるガスインジェクション装置を製造・販売しております。高圧ガス取扱いの資格者・メンテナンスの知識も豊富ですので、ご検討の際はぜひ一度ご連絡ください。

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